温泉行きに直接関係はないのですが、年頭に当って少しだけ。
帰った翌日の正月5日、BSの「日めくり万葉集」(もう再か再々放映になっていますが)を見ていましたら、次の歌が紹介されていました。
「新(らた)しき年の始めの初春の
今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)」 大伴家持
各界の人がそれぞれ心に残った一首を紹介するたった5分の番組ですが、とても興味深く聴きつづけていました。今回は、俵万智さん。育ったところが福井県なので・・いかにも新年に相応しいと。同じく家持もその福井、越前に国司として赴任させられ(左遷である)その地での正月の宴の席で作ったものである。
この歌は、4500首余りの最後に置かれたもので、これにはこの集を編纂した家持の気持が集約して込められているのだといったのは、篠田正浩さん。万葉集の時代、奈良時代は血まみれの権力闘争があった時代、しかも大伴氏は天皇に尽くしながら次第にそれからはじき出され排斥され没落していく過程でもあった。そしてこの集は家持の大伴一族の真情を守り抜くという信念から編まれたものであると。それゆえこの集は権力の非情さのアンチテーゼとして編まれているという。政治的にはそれら怨霊を鎮めるために「平安」と名づけ京都に遷都したのであるが、まさに今は「平成」、「昭和」という戦争に血塗られた時代から脱皮しようという願いもあるにちがいなく、何となく共時性を感じる。
新年と立春がたまたま一致しためでたい年であり、それを寿ぎ、この日しきりに降る雪
、そのようにいっそう益々吉事(よごと)、良いことが続きますようにという、情景とめでたいことを重ねながら詠んだ歌である。
口に出すことで良いことはやってくるという信念、「言葉」の力によって「事」を手繰り寄せようという家持の想いがあり、それがこの集に心血を注いだのだという篠田さんの解説が心に残った。
昨年は「源氏物語」を、さっとの走り通読であったが、やったので、今年は少し万葉集を読み込んで見たいという思いに駆られている。
そしてもっと言葉を信じ、言葉を大切にしようとも・・・。
以上が、雪の温泉から帰ってきた私の念頭の思いです。
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