虫の声

今日のFM放送の「弾き語り・フォーユー」で、リクエストが多かった曲として、「虫の声」と「小さな秋」がピアノで流れてきた。(この番組はこのブログのJinbeiさんから教わったもので、聴けるときにはほとんど聴いている楽しい番組です)。秋といえば虫の声という感覚はやはり伝統的なのだなあ、平安の昔から延々とこの国の人たちは虫の声に耳を傾けて秋を感じたのだなあ、と思った。
しかし私自身、最近は食事時、TVのニュースを見たりしていて、ほとんど静かに耳をすませて虫の音を聴くなどしていないことに気がついた。それでTV を消してみた。6時くらいになってやっと虫は鳴き出したが、思ったより多くはないのである。狭い庭だが、ほとんど野原に近い感じになっているのにである。昔は確かカネタタキなどの声を聴いた気がする。暫くすると確かに虫たちは鳴き出したが、やはりアオマツムシらしい。木の上のほうから聞こえてくる。歩き回っているうちに、少しは下の草むらから声がしていて、どうもツヅレサセコオロギのようだ。とにかく虫の声に包まれるというのはいいなあ…。でもそれほど多くはないのである。TV ニュースなどでアナウンサーが、虫の声が溢れるように…などと言っていたが、それの多くはアオマツムシで、都心の街路樹などに沢山いてうるさいほどの声を聞いたことがあるが、それではないのだろうか。
いわゆる「虫の声」にあるような虫たちは今でも活発に鳴いているのだろうか、と思うのだった。それにしても平安時代に宮廷で虫の声を聞きながら、殿上人たちがそれに合わせるように演奏した、その有様を想像してみるのは楽しい。笙などの笛、雅楽がやはり似合うだろう。「鈴虫」のなかに文字として出てくる楽器は、横笛と和琴、七弦琴である。
先に虫もよく見ると親しみが出るといいながら、ゴキブリはやはりぞっとすると言ったが、実はこの感覚は昔からのものではなく、現代になって作られたものだということを知った。『害虫の誕生ー虫から見た日本史』(瀬戸口明久・ちくま新書)によると、害虫という概念ができたのは近代国家になってからで、またゴキブリが誰からも嫌われるようになったのは、むしろ戦後からで、昔はこのゴキブリをコガネムシと言っていた地方があったということ。それについてはこれを読めば判るし(私もまだ全部読んでいない)ここで紹介するつもりはないが、あれやこれやで虫の話は尽きなくなってきて、三味線の虫の声についてはまた後回しになってしまった。ではまた。

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