前回、今は昆虫がたくさん出始める時期と書きましたが、一昨日の新聞のコラムに蜜蜂が大量にいなくなったという記事があり、受粉を頼っている果樹園などが被害を受けているという。これは以前にもTVでアメリカの例として見たことがあり、『ハチはなぜ大量死したか』という本が出ているくらいで、ハチをはじめ人間がいかに昆虫たちから恩恵を受けているかということである。もちろん恐怖も被害も受けるのであるが、とにかく人間などは、文明などと言ってみても地球の自然界の中ではちいさな存在であると思い当らねばならないだろう。私がゴキブリを見てつい声をあげてしまうのも、そんな人類の畏怖心の遺伝子によるのかもしれない。
このようなことを書くのも、今回の歩きでは、台峯に住んでいるニホンミツバチがいなかったのである。谷戸に下りる坂道の洞にすんでいたところにも、また老人の畑と呼ばれている見晴らしのいい場所にあがる道筋の木の洞にもまったくその気配がなかった。特に後者は覗き込むとクモの糸のようなものがただよっていた。まだ冬眠中なのか、それとも・・・・
しかし嬉しいこともあった。第一の田んぼはまだ健在で、そこでは蛙がたくさん鳴いていて(今はシュレーゲル蛙である)、水面にはシオヤトンボ(シオカラトンボとは別種、5月がピークとのこと)が何匹も飛んでいた。この辺りでここにしかいないとのこと。向かいの林の高い樹の天辺に鷺が一羽。チュウサギということであった。田んぼの蛙を狙っているのだろうか。いつまでも絵に描いたように動かない。田植えの前の田んぼの畦にはキツネノボタン,オニタビラコ。ハルジオン、水の中にはタガラシ(キツネノボタンに似ている)。
平安時代の十二単の重ねなどに見られるような、緑色でも微妙な違いが見られるのは、この芽吹きの若葉の頃で、その繊細さ、しかしうつろいやすい美の感受性は、これらの自然によっても育まれるのであろう。
白っぽい緑の新芽はコナラ、鮮やかな緑はシデやミズキ、黄色っぽい緑はクヌギやエノキなどと教わってもなかなか覚えられないのであった。新芽の色はもっと微妙で赤みがかったりして、誰もが覚えがあると思いますが、柔らかい毛に覆われビロードのようにすべすべした新芽を持つのはシロダモだとか、近くの木を手に取りながら観察などしているとなかなか先には進めません。
第二の田んぼは、悲観的な状況です。隣まで宅地j造成が押し寄せていて、米つくりをこれからも頑張っていくらしいと、この前に来たとき畦の工事をしていた作業員が言っていましたが。
ここから自動車道路に上がって歩いていきますが、途中にあった工事会社の看板はなくなっていました。テニスコートという名による開発が、食い止められたからです。さてこれからがいよいよ台峯に入り谷戸に下りていくわけです。これがどのような形で残っていくかが問題ですが。
池にも少し前までは小さな魚がいたらしいですが、ブラックバスが誰かが放ったらしく、いなくなったそうで、また今年は青い藻がたくさんはびこって水質が悪くなったといわれます。しかし湿地の中の水溜りにちょうどオタマジャクシが孵っているといわれ、靴を汚しながら(この谷戸に入るにはほんとうは長靴がいいのです)案内してもらいました。 いました!、いました! 尾の先まで1センチくらいの小さなお玉がたくさん泳いでいました。赤蛙が終って、今はヒキガエルだそうで、これからはシュレーゲル蛙だとのこと。その近くにもう一つ水溜まりがあり、それは理事をはじめ有志の人たちが作ったのです。そこにもまた卵を産み付けてくれるでしょう。
来月になると、もうすっかり新緑に染まっている事でしょう。では今回はこれまで。
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