ジャンクション・ハーベストからこの詩集が届いた。さらりとした静かな詩集である。
恥ずかしいことに椚原という姓が、私は読めなかった。「くぬぎはら」さんであった。
最近、介護に携わった人の詩や詩集を目にすることが多くなったが、これも101歳で亡くなった母の介護とその見送りのなかから生まれた作品でー母に捧ぐーという献辞がある。
冒頭の詩にぞくりとした。昔読んだ小川アンナさんの「にょしんらいはい」を思い出した。アンナさんの作品も母の最期を見送った際のことが書かれている。書き出しは「おんなのひとを きよめておくるとき/いちばん かなしみをさそわれるのは/あそこを きれいにしてやるときです/・・・・」である。
いま「おくりびと」が映画にもなり評判になっているが、詩の世界ではこのような事柄はさりげなく生じているような気がする。
では作品の紹介。
ひゃくさいのでんぶ
ひふとひふとのあいだにひそむ
すぎこしさいげつの
たにくだりおちて
ひとすじのみちをつくり
いくすじものみちをつくり
やがてかーてんによせるどれーぷのごとく
たるみさがって
むすこよ
ひるむでない
おかんもこんなになるのかなぁ
おれがふくのかなぁ
って いったね
はじめてめにする
ひゃくさいのでんぶ
わたしをうみおまえをうみ
ひそかにいきづくいのちのありどころ
いのちをつなぐしまつのしどころ
においにたえて
ふくべし
すべてひらがな表記である。「にょしんらいはい」も同じようなひらがな書きである。
『ぷりん』の全体もほんの少しだけ漢字がまじるものの、ほとんどがひらがなである。自国の人間が自分たちのために作り出したひらがなは、やはり小泉八雲が愛したようなこの国の繊細で思いの深い感情を表すのに適しているのだろうか。
ぞくりとした後に手を合わせたくなるような詩である。
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