窓辺で鶯鳴く

数日前、窓の外で何かがぐずぐずと声を出しているのに、あ!鶯が声繕い・・と思っていたのだが、今日やっと声を発したのを聞いた。まだ様になってなくて、ホケホケといったり、尻切れトンボになっていたりするのも可愛らしい。声もまだささやき、つぶやき程度。これが春たけなわとなると、林全体に響きわたる高い声になるのだから面白い。どの鳥も囀りを持っているのだけれど、その差の大きさと声のユニークさで抜きん出て、「初音」を愛されるのだろう。
とにかく日本人にとっては鶯の声は特別で、又その声もあたりを制するのですが、その声自体を賛美表現したものはあるかなあ・・と思ったとき、私の頭に浮かぶのは、同じく声を愛されるホトトギスで杉田久女の
     
      谺(こだま)して山ほととぎすほしいまま
で、まことに春半ばから夏にかけての鶯の声は、「ほしいまま」という感じで響き渡るのですから。
ご存知の通り鶯は、姿としてはかなり地味な方で、鶯色というのはむしろ目白の方がふさわしく、こちらはくすんだ緑だし、冬場は藪の中にひっそりと暮らして、いわゆる笹鳴きというつぶやく声を出すだけである。白いアイラインを持つ目白の方がしぐさも姿も可愛らしく、鶯の方は眼も切れ目の感じで身体も細身、きりっとしているがどこか怖そうな女人を思わせる。でもやはり貫禄があるなあ。
さて、その声を聞いた私はやはり胸が躍って、ちょうど障子を開けていたので、慌てて声のあたりを眺めると、いましたいました! 声を出すたびに羽根を小さく広げ、パタパタさせながら喉を震わせている。懸命に練習をしているのでした。
それを見ているとなんだか私も元気が出てきました。ちょっとこのところ気分が落ち込んでいたのですが、今日の春めいた日和のせいもあって、それを眺めているうちに次第に内から元気が出てくる感じがしたのです。やはり春なのだなあ・・・と。春に感応して、そんな小さな生き物でも、これからの春に向って生きようとしている。囀ろうとしている。それは多分本能でしょう。そして同じ生き物である私の中にも、そういううごめきがあるのを感じる思いがしたのでした。それを十分に感じながら、さあ、元気を出さなくちゃあ・・・と。

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