野外劇場 高校生の演劇 『山姥』

近くの高校から、近隣の住民へこの招待状のチラシが届いた。
ここでも先にこの高校の花火のことを書いたが、演劇活動も活発なようで、本格的なカラーのチラシや紹介された朝日新聞の記事のコピーなども入っていて、面白そうなので出かけてみた。
穏やかな秋の宵、爽やかだがいかにも冷え込みそうな中、高校裏庭の木立をバックにした野外ステージがあった。背景は重なる白い山々と左手の夜空にかかる大きなオレンジ色の蜘蛛の巣。蜘蛛の化身であるという山姥が、人間の子どもを生みたいと思うことから始まる、民話を基にした物語である。
蜘蛛の巣は100メートルのロープを編んで作ったというが、このように大道具から小道具、音響、照明、衣装、メイク、宣伝まで全て生徒の手になるもの、部員は31名とのことで溌剌とした表現力に楽しませられた。
主演の山姥の世界は山神はじめ狐や鼬や蛙等の妖怪たちの奇抜で華やかな衣装、一方人間界の村人たちの質素な衣装もそれぞれ面白くまたふさわしく、雪や洪水、土砂崩れ、炎なども大布を使った場面展開も巧みで、テーマとなる歌から祭りの大太鼓、梟などの声までそろっていて、それぞれの部門で皆頑張っていることが感じられる。
テーマは、山の掟と村の掟、山姥が産んだ子どもを村人に託すことから両者の関係が生じ、そこに生まれる親子愛である。その子が成長し絆が破局へと進んでいく経緯を、狂言回しとしての狐が物語って行くが、山姥をはじめ皆熱演で、中でも大勢で踊る群舞には勢いがあり、いかにも若者のエネルギーが感じさせられる場面であった。
ここまでに至るのはやはり積み重ねがあったようで、熱心な顧問の先生が赴任してきた9年前から活発になったようで、今回は先日の横浜のフェスティバルでは、大人の劇団にまじっての公演も経験してきたとのことである。一時間半の熱演。帰りは入口に部員が全員並んで、まぶしいほどの照明の中、花道を行くように観客は「有難うございました」の声に見送られる。
目潰しの光のトンネルを抜けると、「若い人は、元気が良くて羨ましいね」と年配のご夫婦の声が聞こえてきた。「この次は、何か持ってきてあげましょうか」と奥さん。
私も元気をもらったような気持ちになりながら、冷え込んできた夜道を家路についた。中天にはくっきりと半月が眺められた。

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