自然の中のコンサートは楽しかったが、第一部がこの催しの趣旨なのであった。
「南米パタゴニア原生地区の自然と身近な保全について」という題で、スライドによる現地の説明と、同じく保全に携わっている人を交えた3人のトーク。その中の一人が、いつも案内をしてくださる野鳥の会の加藤さんである。
パタゴニアは、南米のチリとアルゼンチンにまたがる広大な地域だという。
タイトルには「原生」とあるが、実は家畜の過剰放牧、森林伐採、石油採掘などさまざまな環境破壊に直面している地域でもあるとのこと。そこをある企業が、環境保護グループに協力して、土地をトラストして、それを原生に近いまで回復させた末、政府に土地を寄贈し、国立公園として永久に保存する活動を始めたのだという話である。その会社名がパタゴニア社(アウトドア・スポーツウエアなどの販売)。それで私は最初は土地の名前と混同して戸惑ったのであったが。
その会社は、世界各国にある支社の従業員をボランティアとして派遣し、日本からも今回7名ほどが派遣され、その一人がこの日のパネラー(赤星明彦氏)であった。ボランティアといってもこれまでどおり会社からは給料の出る仕組みで、「パタゴニア・ナショナル・パーク」プロジェクトという。
自然に戻すといってもその広さといい規模といい、台峯と比べたらアリとゾウくらいの違い、いやもっとかもしれない。今牧場を無くし、原生に返すところだそうだが、その牧場の広さは神奈川県ほどなのだという。しかしそこには羊と共に生きてきたガウチョと称す牧童たちの生活がある。その生活権を考えた上での計画なのだそうだ。実際今化学繊維などの発達から、羊毛は生産過剰になって値段も下落してきているともいう。
また実際、牧場を廃すといっても、ただそのまま放置するわけにはいかない。牧場を囲っていた金網の撤収だけでも大変である。総延長800キロに及ぶそれを巻き取り(そのままにしておくとそれに引っかかって死ぬ動物が出てくる)、杭を一本一本手で引き抜き、またその穴を埋めねばならないのである。
いったん壊した自然であるから、その地にあった生態系が取り戻せるまでの草刈などの管理も必要になる。そのためガウチョたちの生活もあるので、エコツアーの誘致などでも経費も得られるような計画など、考えれば気の遠くなるような計画ではあが、着々と進んでいるようであった。
この会社の設立者が、そういう環境保護活動を進めていた女性経営者(夫と協力)であると聞いて、嬉しかった。
自然を壊している最大の原因は人間の生活そのものである。特にそのための利益を優先させるのが企業であろう。しかし「死んだ地球からはビジネスは生まれない」といい、それゆえ会社を使って環境にいいことをせよ、というのがその社の方針であると、そのパネラーはこの会社をよろしくと宣伝をもかねて話を結んでいたが、企業のあり方もこれからは変わらなければならないだろう。この会社は、ボランティアだけでなく総売り上げ(利益ではなく)の1パーセントを環境に返しているそうである。
パタゴニア社という会社があったのかなあ、これから気をつけてみようと思ったのだった。
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