下関市では駅に近いホテルに宿をとりました。あちこち行動するのに便利だと思ったからでした。
先ず最初に私の生れ落ちた地に行ってみるつもりでした。そこは市内でも在来線で一駅戻ったところにあり、そのためにも駅に近いのは便が良いことでした。
その駅、幡生は山陽・山陰本線の分岐点に当たっています。夏の盛りで毎日暑い日がつづいているので、できるだけ朝早いうちに行動して、日中は動くのを控えたいと思ったのですが、そうは行きませんでしたけれど・・・。
夏の朝は気持ちがいいものです。駅に降りると丁度登校時間帯らしく、夏休みだと言うのに中・高校生が次々に降りていました。駅舎自身は古い場末の感じがするもので、便所などと言う漢字が大きく書かれていたりして、ちょっと気持ちが殺がれましたが、出るや否や大きな工事現場が広がっていて、いっそう戸惑ってしまいました。すなわち今この駅前には高架橋が通ることになっていて、その橋梁工事が進行中なのでした。金網やコーン標識(?)に誘導されるようにしてしばらく歩き回りました。探す地点は駅に近いところで橋と川が目印でした。幸い川と橋は存在していたようです。でも私が探していた地点は、多分高架橋梁工事の範囲内であるに違いありません。遠くの方でこれから作業を始める人たちの準備運動する姿が見えました。川辺の大きな合歓の木の花(こちらではもう花を散らしたのになあ・・)を眺めたりしながら名残惜しく歩き回った後、駅に引き返してきたのでした。
広々としたホームはがらんとして、そこからは古く立派な瓦屋根の家やいくつかのマンションが眺め渡され、市の中心部に近い郊外の住宅地と言う風情でした。
後で判ったことですが、ここは海にも近く、昔からの海水浴場だったようです。いい季節の時でしたら、その海にも出てみればよかったのですが、それはまたの機会にして(何しろ帰ることのある福岡からは近いわけだから)、下関に引き返すことにしました。
その足で市役所と図書館に行きました。そこで下関の資料を少し手に入れ、近くにあるはずの林芙美子生誕の地の碑の場所を尋ねましたが、図書館員でさえ知りませんでした。この辺りでは今、金子みすずに大きな照明が当てられ、芙美子は影が薄くなっているようです。
あまり注目されていないその碑を見てから、バスで唐戸(東京の築地にあたる唐戸市場がある)に出て、そこから県立美術館と長府庭園を訪ねました。ここはバスの便がとてもよく、タクシーの必要がないようです。
歴史の古い長府は城下町の名残が多く残っていて、今ではそれら建物や街並みを観光資源としているようで、中でも山口の瑠璃光寺の五重塔の優美さに通じる功山寺の仏殿があります。長州庭園もその見所の一つで、丁度蓮の花が咲いていました。もう名残のようでしたが・・・。その向かいにあるのが市立美術館。緑に囲まれ海が眺められる広々としたところにあり、心が伸びやかになります。ここでは、下関に英国領事館が出来て100年目に当たるので、「日英の絵本」特別展が催されていました。
ここでゆっくりとしていたかったのですが、予定の中に「火の山」(昔ここで狼煙を上げたという小高い山)ロープウエイでのぼり、その展望台から関門海峡と、その吊橋を眺めることが入っていたので、またバスで唐戸に帰ってきました。そして最後はその唐戸市場に降りて見学し、そこの食堂で新鮮な魚料理でも・・・と楽しみにしていたのですが、残念ながらその日は市場は休業で、それでもたった一軒だけ寿司屋が店を開けていたので、そこで夕食とし、暮れていく海峡と行き交う大小の船舶をしばらく眺めた後、ホテルに引き上げました。ここに2泊したのは正解でした。
明日のことはもう一回、簡単に書くことにします。
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