もう一週間近くたってしまったが、紀伊国屋サザンシアターでこれを観た。
題は日本語にすると「エイミーの考え」と言うことで、エイミーが子どもの頃、自分で印刷して近所に売り歩いていた新聞のことである。そんなしっかりした考えのエイミー(河野しずか)と彼女が尊敬してやまない舞台女優の母親、エズミ(奈良岡朋子)の母と娘の物語である。と同時にエイミーの夫となり、後にTVで代表されるマスコミの世界で成功していくドミニック(境賢一)との芸術上の対立のドラマでもある。
父子と違って、母娘には絶ち切れぬ関係が最後まで続き、愛が深ければ深いほどその愛憎は深くなる。一方、舞台芸術に固執しTVを軽蔑する母親と、その世界で成功の道をひた走る夫との間に立って、それを何とか和解させようとするエイミー、その信念は「愛」であるが、バブル期を経て16年間に夫婦の間は破綻し、エイミーの自死ではないが突然の死という結末に至る。
奈良岡朋子は、舞台で自分の職業の女優の役は初めてだそうだが、この役は経歴はもちろん現在の状況に通じるところがあり、水を得た魚のように思い切り演じているようだ。
TV、マスコミの発展の中で、果たして演劇は死に瀕しているのか・・・?
そこで、パンフレッドの中にある作家恩田陸さんの文章に共感を覚えたので、それを紹介することで結びとします。
「この作品は、1997年のものだが(イギリス=筆者注)、現在のヘア(作者)はどう思っているのだろうか。21世紀を迎えた今・・・まさにテレビもマスコミも死につつあるこの状況を? 「死んだ」と断定したがるのは、常に男たちである。特に現代のきな臭く不安に満ちた世界では、男たちは世界を終わらせたくて仕方ないように思える。しかし、女たちが芝居を演じる限り、誰も死なないし、演劇も死なない。先ずは、女は産んで育てるところから始めるからだ。—そもそも苦労して自分が産んだものを、おいそれとは殺せないし、死なせない。もしかすると、「母と娘たち」の時代(=いまや息子に多く期待せず、むしろ誰もが娘を頼る時代になったと言うこと)は、終わりたがっている世界が意識下でSOSを求めている時代かもしれない。」
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