いよいよ教育基本法が改正される段取りとなった。憲法改正と連動したこの一連の動きは憂うべきものだと、私は思う。なぜなら国や郷土を愛すること、また日本の自然、伝統文化を大切にすることを、道徳の時間に殊更取り上げて学ばせる必要がなぜあるのだろうか・・・と思うからである。
私はかつて生徒を教えた経験があり、そのときの同僚や知人などから今の教育現場の話を聞くと、非常に締め付けが強くなった(特に東京都)という。教育は大切で、また教師の質もそれを左右する。しかしそれを国家権力による締め付けで行うことに、疑問を持つのである。
こんな現状を耳にし目にするにつけ、私は今「撃壌歌」を思う。
この言葉は、昔々漢文の時間(歴史も関係するが)に教わった話で「鼓腹撃壌の歌」とも記憶している。
中国の上代歌謡で、時は上古の堯の時代、時の帝が世情を探りに身をやつして巡っていたとき、百姓がこれを唄って畑仕事をしていたという。
日出而作、
日入而息。
鑿井而飲、
耕田而食。
帝力于我何有哉。
その意味は、朝になれば(仕事に)出かけ、日が暮れれば、息(やす)む。井戸を鏨(うがち)て(水を) 飲み、田を耕して食べる(生きる)。帝力(堯帝の権力)など、私にとって何有哉(どのような影響力があろうか)。
これを聞いた堯帝は、大変満足したという話。
すなわち、民は自分たちの平和で満足した生活は、誰の力でもなく、帝の政治力や権力によるのでもなく、自然にあるものだと感じている。それこそが治世者として最高の功績だと思ったからであり、自分の政治がうまくいっていると考えたからである。
中国では、この堯と次の時代の舜とを合わせて、政治の規範、理想とした。すなわち堯舜の時代という(伝説のようであるが)。
政治というのは、本当はそんなものではないだろうか。
だが、こんなことを考えるのは余りにも理想論過ぎるだろうか。
しかし憲法もまたそれに準じた教育基本法も、言ってみれば私たち国民の理想を掲げたものではないだろうか。もちろんそれを現実化する面ではいろいろな細工も必要であろう。しかし理想という背骨まで失ってしまっては、国は堕落の一途を辿るしかないだろう。
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