このあたりの桜たち

東京・横浜のソメイヨシノは満開とか、昨日はお花日和ということなので、この辺りの桜たちに会いに行くことにした。向かいの雑木林も、仄かな芽吹きにほんのりと薄紅色が混じるようになってきた。
六国見山から明月谷に抜けるコース。4時を過ぎてからなので人もほとんどいない。
このあたりの桜は山桜と大島桜が多い。ヤマザクラはえび茶色の葉といっしょに花が咲く。オオシマザクラは花の色は白に近く、葉は緑色でやはり花と共に芽吹くようだ。だからソメイヨシノのような華やかさはない。染井吉野は染井という江戸の町に由来することからでも分るが江戸時代に品種改良されたもので新しい。
今のお花見の形も、庶民が享楽できるようになった江戸時代、特に江戸の庶民の習慣から来たのかもしれない。昔は、というよりこの辺のお花見は、花の下でというのではなく、丘陵の緑の中に点在する桜を遠くから眺めて楽しむものだったと、これは「台峯歩きの会」で聞いたことである。
頂上の桜は、まだ蕾が多かった。だがその花を見上げるよりも前方の丘陵の重なりの、あちこちが桜色に染まっているのを眺めるのが快い。ああ今年もまた春がきたのだなあ・・・と。そしてこういう感慨はこれから年を重ねるにつれ多くなっていくのだろうとも思うのだった。
そこから尾根伝いに明月谷へと下りて行く。そして明月谷に至ろうとする途中の眺望が、私のお気に入りだ。深い谷のこちらと向かいの、まだ幼い芽吹きの、微妙な濃淡をした緑の中に桜色が刷毛で描いたようににじんでいる・・・。このあたりはソメイヨシノも結構あるようだ。
この谷の喫茶店「笛」で休んでいこうとしたら、3月末頃から4月2日まで春休みをしますと書かれてあった。この間は木曜日だったので休業日、どうもこの店とはタイミングが良くないようで残念。
明月院に来るとすでに閉門しているが観光客の姿もあって、いっしょにぶらぶらと、ほぼ満開のソメイヨシノを見上げながら駅まで歩いた。それから雲頂庵への階段を上り、また線路の向こうの丘陵を眺めながら帰途についた。その丘陵の向こうが台峯の谷戸である。

カテゴリー: 北窓だより パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です