今日も真冬並みの冷え込みとなったが、昨日も寒かった。
台峯歩きもこのところ予定があったりして休みがちであったが、その緑地をこれからどのように保存していくか、その基本構想を市民に提示する市の説明会が昨夜行われたので、出かけねばならないだろうなあと思ったのだった。市内の5ヶ所で行われ、近くのその会場が最後であった。
本当は、昼間も外出したし、夜で寒いし、行きたくなかった。しかし意を決して出席したのだった。
思い切って出かけてみて、よかった。
これまで役所のやり方をあまり信用していなかったし、緑地が残ったのは嬉しいが、きっとがっかりさせられることが多いにちがいないと思っていたのである。役所もずいぶん変わってきたものだなあというのが実感だった。
詳しいことは書けないが、保存の基本理念の方向としては台峯緑地のすぐれた自然環境をできるだけ壊さないように、そのままの形で残すようにすること。もちろんそこが、人の自然とのふれあいや自然教育の場ともなるように考えるが、自然体系を壊すような手の入れ方はしないこと。所によっては人間の方を檻に入れるような形で近づけないようにもすることがあってもよく、単純に緑を守るというのではなく、自然そのもの、また専門家や市民の意見にも耳を傾けながら試行錯誤して計画を進めて行きたい、というのが大まかな内容であった。
もちろんここに至るまでの地道な市民レベルの活動があったわけで(私は含まれていません)、前から登場してもらっているこの地を丹念に歩き回り生態系を観察研究しておられ、毎月案内をしてくださっている久保廣晃氏たちの熱心な働きかけもあったにちがいないが、今のところこのようないい形で市が進めようとしていることに安堵した。
実際そういう気持ちの発言をした若い男性もいた。彼は台に住んでいるとのことで、(この「台」にも「台峯」とは別の緑地があったのだが、こちらの方は最近全て開発され60余戸の宅地になってしまった)
そこの緑地が次々に切り払われていくのを間近に眺めていて、胸が痛くなったのだが、こちらの方のこのように貴重な谷戸が残ったことが嬉しく、市や担当者の尽力に感謝するという趣旨であった。それを聞いて市の担当者は、そんな風に市民の方から言われると非常に嬉しい、その声が何よりの励みになるという言葉には実感がこもっていた。所有権という問題があり、行政の担当者も大変苦労するのである。
そういう発言や説明を聞きながら、緑に対する人々の意識、そして行政の対応に時代の推移を感じていた。実は私たちがこの地にやってきた時、同じようにというよりももっと大々的な宅地開発の波が、押し寄せていたのである。六国見山の中腹を開発する、いわゆる「円覚寺裏山を守る」住民運動が行われており、来たばかりの私たちも、柄になくそれに巻き込まれ、矢面に立った経験がある。結果はもちろん多くのそれと同様、開発は推進された。
25年以上も前のことだが、そのときの行政側の対応を思い出したのである。人々の意識も、行政側の態度もずいぶん変わったなあと思ったのはそういう訳があった。そしてその運動に一緒に携わった、今ではあの世に行ってしまった人への報告をもこめて、このことを書いておきたかった。
説明会でも出たことだが、緑を守ろうといっても、そもそもその主体者もまた、かつては緑の侵入者であるという、矛盾を抱えている。常に被害者であると同時に加害者であるという人間の両面を考えておかなければならないだろう。
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