朝起きると、辺りはしんと静まりかえって外はまだ暗い。カーテンを開けると、一面の雪景色だった。
予報どおりに雪になって、絶え間なく降り続いている。少しくらいの雪ならばと思っていたが、残念ながら出かける気持ちがなくなってしまった。駅まで歩いて20分、坂道のちょっとした峠も越えるので足元がおぼつかないからである。小森さんの「『坑夫』をよむ」の講座なのだが・・。その点受講する側は勝手で、気楽である。もしこれが仕事であればそういうわけにはいかないだろう。やはり仕事というのはつらいものだなあ。
そこで専ら雪見となった。予報では3,4センチぐらいの積雪のはずだが、朝の段階で6,7センチ、今はもう10センチ近くにもなってきた。夜まで降り続けるつもりかしら。
前回の「日本語で読むお経」のことから、仏教についてちょっと書いてみたくなった。
地球を救うのは仏教思想だと書いたが、そのことについてである。
イスラム教、キリスト教、仏教をそれぞれ「砂の文明・石の文明・泥の文明」から生まれでたものだと読み解いた人がいる(同名の新書で著者は松本健一)。確かに仏教はアジアのモンスーン地帯の泥沼、湿潤地帯で生まれ育った。インドにも中国にも砂漠はあるが、西側のそれとは違って湿っているという。
インドのカルカッタの名の由来は「葦の生える沼沢地」だそうである。太古の日本は「葦芽(アシカビ)の国」と呼ばれていた。
砂や石が無機質の、荒蕪な土地で、生命を生みださないものであるのに対して、泥、泥濘、土のどろどろは生命の源である。その風土から仏教は生まれた。
この世が石や砂であるのが基本の地において、生命体である人間が生きていくためには、この世以外の大きな力、神の存在が必要になるだろう。そして理想の国、天国は、この世から離れた遠いところ、天にあると考えるしかない。
しかし泥という混沌は、そのものが生命を生み出すものであり、そこから生まれでた命はまたその中に帰って行く。外からの力など必要とせず、そのものの中にその力がある。地獄もそこにあれば天国もそこにある。輪廻転生という思想が生まれるのもここからであろう。
今、宇宙の時代などといって、地球を汚し破壊した挙句、人類は別の星に移住をしてしまおうという考えもあるようだが、それは石や砂の思想から来たものであって、泥の世界からは生まれないのではあるまいか。
「日本語で読むお経」の中に、お経の本文からちょっと離れて、その神髄をやさしい言葉で詩のように表現した一節がある。それは水野さんがブログでも紹介していた「法華経方便品」の末尾で、これは詩人が自分の言葉で心を込めてその思想(諸法実相)をやさしく表現しようとした部分であろうと、私も心を打たれた。そこでたとえとして「野の花」が出てくる。
その野の花々も秋になれば枯れ、冬にはなくなってしまって、いったんは消えたように見える。しかし天の法雨と光を受けて、大地からまた蘇って花を咲かせるといい、宇宙の因縁の中で滅びることはないという。
聖書にも、「野の百合」として有名な箇所があるが、「労せず」「紡がず」育つのは神の恩恵であり、神の大いなる力であり、だから神を信じなさいという。そして求めなければそれは与えられない。信じ求め続けなければならない。一種のロマンチシズムに通じるところがある。
だが仏教では野の花も無であり、空であるが、それ自体が野の花という生命を、色を生む。それは現実であり、それをそのまま肯定する。しかしそれを無であり空であると「観じ」なければならない。何という徹底したリアリズムであろうかと、私は思う。
砂や石というきびしい現実であるゆえに、その現実を否定し、より美しい世界を高みに求めようとするロマンチシズムではすでに救えなくなっている地球、まだまだ豊かな生命力を持つ地球の現実を観じ、直視する仏教のリアリズムが、これから必要になっていくのではあるまいか・・と。だんだん堅苦しくなり、自分でも収拾がつかなくなりそうなので、この独断と偏見の感想文はそろそろ終わりにします。
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