伊佐地那冶 合唱指導40周年記念コンサート(大田区民ホール アプリコ大ホール)を聴きに行く。氏が指揮・指導している合唱団東京コール・フリーデに友人のTさんが所属しているからである。Tさんは都の職員で図書館勤務、ベテランであるが、仕事が終わった後、宗教曲をメインにしているこの合唱団で練習を重ねること数年、だんだん深みに入っていくようである。今回はそこだけでなく、皆で六つのグループの150人以上、プロのソリストも加えた大合唱であった。
演目は、ベートーベンの「ミサ ハ長調」作品86番とモーツアルトの「レクイエム ニ短調」K626という、記念コンサートにふさわしい二大宗教曲であった(オーケストラは東京ユニヴァーサルフイル管弦楽団)。
ベートーベンのは、いかにも彼らしい堂々とした曲であるが、心が引き絞られるように出だしから感じられたのはモーツアルトの方である。映画「アマデウス」の影響で、天才の彼がそくそくと迫る自分自身の死期を感じて書いたと思うからかもしれない。事実はそうではなく、また最後の方は後の人が書いて完成させたらしいけれど、やはり予感というのはあったにちがいない。
氏の経歴を見るとプロの合唱団を率いているが、職場や地域や学校などの多くの合唱団の指揮と指導を手がけてきた人のようだ。Tさんの合唱団には、80歳をすぎた高齢者で、それ程ではない年金暮らしの中で他の支出は極力切り詰めて、合唱活動にだけ全力を注いでいる女性がいるといい、その気迫に感心させられると同時に励まされるという。
キリスト教の神髄である宗教曲を日本人が歌い、それに感動するということについて、いまや西洋音楽の名手に東洋人も多く出現していると同様、文化はすでに国境を越え、宗教を超えているのだと思った。
そして、仕事を持つ傍らそれらに熱中したり、またそれを鑑賞したりできるのも、それだけ音楽の裾野が広がっていることであり(私もまたその裾野にいる一人であるが)、そのような事柄にも貢献した伊佐地氏の40年でもあろうと思った。
また、終演後に何人かで店に入り語りあいながら、こういう美味しいものを食べたり飲んだり、音楽を楽しんだりできるのも、日本が豊かで平和であるからだと言い、でももしかしてこれがたちまち幻となってしまうのではないかという恐れを特に最近は感じると言ったのは、私を含めた戦争や欠乏を知っている世代だった。
このブログにコメントが出来なくなっているといわれました。どうしてなのか分りません。何とかしたいと思っているのですが・・・
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