水野さんの24日のブログを読んで少なからぬショックを受けた。
それは高橋たか子の「日記」からの言葉を紹介したもので、日本文化への批判だが、まさに私自身に向けられている感じさえしたからだった。
存在的エネルギーの量や強さが西洋人に比べて少ないのではないかというが、そんな日本人の中でも少ないと常々思っている上、それを少ないなりに一つにまとめ、自分の存在をはっきり打ちたて、強力にした上で他人と向き合うべきなのに(それがまた他人への礼節につながる、また他人への深い眼差しにもなる)、そういう内在の力を養うことをしていない、という批判は、まさにその通りだと思った。その強力な内在の力で、とことん学問をしたり政治を行ったり(もちろん芸術することも)、することがない。「一方向への徹底性がない」・・・・ああ、ほんとうに自分を眺めてもそうだなあと思うのだった。
ピアノは独習だといったが、いまさら上達にかける年齢でもないけれど、わたしにとってこれは「ひとりあそび」の一つだと書こうとしたところだった。「世の中にまじらぬにはあらねども ひとりあそびぞわれはまされる」という良寛の和歌をひいて・・・。
良寛にとって、和歌も漢詩も書も「ひとりあそび」に過ぎなかった。その世界を追究したり、新しく切り開いたり(または何らかの名誉や栄達のためにでも)するのではなく、存在する上の「すさび」だったのである。ここには存在する自己の確立もないかわり他者もいない。
良寛の漢詩に次のようなのがある。「花 心無くして蝶を招き/蝶 心無くして花を尋ぬ/花開く時 蝶来たり/蝶来る時 花開く/吾れも亦人知らず/人亦吾れを知らず/知らず 帝の則(=自然の道)に従う」
花も蝶も人間も、すべて自然の則の中でただ存在しているだけである。この世での束の間の存在、命の中で、花が開き蝶が舞うように「すさび」をして生きているだけである・・・という内容。
考えてみるとこの「北窓だより」の題をもらった菅原道真も,政権争いに敗れて流されたのに、恨みに恨むという激しさ、「岩窟王」になることもなく(もちろん怨霊となって後に恨みを晴らすのだけれど)、現実的には北窓からささやかな3つの楽しみに甘んじるという悟りに似た心境で過ごすわけである。
こういう日本的な無常観に満ちた文化的土壌がいやだなあという気持ちも一方には強くあって、それが西欧の思想や文化に向かうのだけれど、この落差を自分の中でどうするか、それが大きな課題です。
西欧文化の一つであるクラシック、そしてピアノに私が惹かれるのもそれであろうと思われ、そのことを強く感じさせられた水野さんのブログでした。
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