同潤会アパート。


1日かけて「ナラタージュ」(島本理生)を読んだ。
「本の雑誌」が選ぶ2005年上半期の1位と、
どこかで見ていたのもあり単純に興味本位ではあったのだけれども。
「ナラタージュ」とは映画などで主人公が回想の形で、過去の出来事を
物語ることを意味する言葉らしい。
読んでいて著者は30代前半くらいかと思った。
というのも書かれているものの中に「みつばちのささやき」、
「存在の耐えられない軽さ」、「アンダーグラウンド」などの映画や
同潤会アパートなどがちょっとした素材として出てくるので。
プロフィールを読んで驚いた。21才だという。
主人公の年齢とほぼ同じなのでそうなのかという気もするけど
何気ない風景がリアルに浮かんでくるような表現の広さは
とてもそんな年齢とは思えなかったというのが正直な感想。
ふだんは女性の書く本、特に恋愛話は読まないのだけど
めずらしく最後まで一気に読んだ1册。
読みながら江戸川にあった同潤会アパートのことを思い出した。
19才の頃に1度だけ行ったことがある。
行くことになった経緯は憶えていないが
通っていた予備校の先生がそこに住んでいて数人で遊びに行った。
陶芸が本職で顔は蟹江敬三、体型がブルー・スリーといった
言葉というよりは感覚で会話するような先生だったと思う。
そこには数時間しかいなかったのに強烈に記憶に残っている。
アールデコ風の石の階段をゆっくり上りながら見たそこの住人のユニークな表札や
先生の部屋の壊れて使われていないロココ調の足付きバスタブ。
夕方、中庭を挟んで見える向かいのアパートの様子は
まだ、どの部屋もカーテンを閉めずにいたせいでよく見えた。
あまり憶えていないが建てられた時から個々の部屋に付いていたのだろうと
想像できるシャンデリアなどの古い照明機具がとてもきれいだった。
とても人気のあるアパートだとは聞いていた。
随分あとになって知ったことだけど
建てられた時は「東洋一のアパート」と呼ばれていたそうで。
もう一度見たいが、今はもう取り壊されてない。
写真を撮っておけばよかった。
こういうのを「ナラタージュ」って言うのだねぇ?、きっと。(笑)

カテゴリー: 未分類 パーマリンク

同潤会アパート。 への2件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です