中神英子「砂丘」もう一人のわたし

砂丘   中神英子

よる 鳥が来て
わたしのかたちで啼くので
わたしは砂を握り眠る
鳥がわたしの両手に翼をそえて
その啼き声通り
わたしが あした はろばろと歩む
砂丘を作ってくれるように
やわらかに美しく流れる風紋と
乾いた清涼な空気の中に
新しい夜明けをもって
立てるように・・・・・・・・・・・・と
まだくらいうちに
わたしの方向へ鳥が来て
わたしのかたちで啼くことを
わたしは知っているので
よる
わたしはわたしの分の砂を握り眠る

 この詩は私を私の知らない異次元への世界へとひきこんでいく。

よる 鳥が来て
わたしのかたちで啼くので
わたしは砂を握り眠る」
と始まり、声高でも刺激的でもなく、静かにかたられていきます。
決して今まで見たこともない。聞いたこともないとは感じないのですが、これまでの私の世界の
向こう側を通っているような気がします。

わたしがあした はろばろと歩む
砂丘を作ってくれるように」
その世界は決して堅固ではないのだけれど、私の内側と同じぐらい、しっかりと脈打っている。
異次元だと思っていた世界は、もしかしたら、私自身のなかに遠い昔からあったかも知れない。
まだくらいうちに
わたしの方向にへ鳥が来て
わたしのかたちで啼くことを
わたしは知っているので
よる
わたしはわたとしの分の砂を握り眠る」
この詩人は独りで自分を抱きしめているのだろう。
詩はこの詩人の唯一の支えであろうと思います。

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