砂丘 中神英子
よる 鳥が来て
わたしのかたちで啼くので
わたしは砂を握り眠る
鳥がわたしの両手に翼をそえて
その啼き声通り
わたしが あした はろばろと歩む
砂丘を作ってくれるように
やわらかに美しく流れる風紋と
乾いた清涼な空気の中に
新しい夜明けをもって
立てるように・・・・・・・・・・・・と
まだくらいうちに
わたしの方向へ鳥が来て
わたしのかたちで啼くことを
わたしは知っているので
よる
わたしはわたしの分の砂を握り眠る
※
この詩は私を私の知らない異次元への世界へとひきこんでいく。
よる 鳥が来て
わたしのかたちで啼くので
わたしは砂を握り眠る」
と始まり、声高でも刺激的でもなく、静かにかたられていきます。
決して今まで見たこともない。聞いたこともないとは感じないのですが、これまでの私の世界の
向こう側を通っているような気がします。
わたしがあした はろばろと歩む
砂丘を作ってくれるように」
その世界は決して堅固ではないのだけれど、私の内側と同じぐらい、しっかりと脈打っている。
異次元だと思っていた世界は、もしかしたら、私自身のなかに遠い昔からあったかも知れない。
まだくらいうちに
わたしの方向にへ鳥が来て
わたしのかたちで啼くことを
わたしは知っているので
よる
わたしはわたとしの分の砂を握り眠る」
この詩人は独りで自分を抱きしめているのだろう。
詩はこの詩人の唯一の支えであろうと思います。