金芝河(キム・ジハ)「あの遠い宇宙の」 びっくりするほど好きな詩

あの遠い宇宙の  金芝河  翻訳・佐川亜紀・権宅明(クォン・テクミョン)
あの遠い宇宙の どこかに
ぼくの病をわずらう星がある
一晩の荒々しい夢をおいてきた
五台山の西台 どこかの名の知れぬ
花びらがぼくの病をわずらっている
ちまたに隠れ 息を整えているはずの
ふしぎなぼくの友だち
夜ごと病むぼくを夢見て
昔 袖ふれ合った ある流れ者が
ぼくの中でクッをする
女ひとり
ぼくの名を書いた灯籠に 火をともしている
ぼくはひとりなのか
ひとり病むものなのか
窓のすき間から なぜか風が忍び込み
ぼくの肌をくすぐる
    五台山……韓国東北部にある名山。上から見ると五つの峰が蓮の花のような形
         をしている。
    クッ………供え物をして踊りを踊ったり呪文や神託などを唱えたりして、村や
         家の安泰、病気の治療などを祈ること。
         詩集「中心の苦しみ」から

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