西瓜の種をかむと 清岳こう
爪先の細胞がひとつめざめる
南瓜の種をかむと かかとの細胞がひとつはじける
蓮の実をかむと 乳首の細胞がひとつふくらむ
こうして 私はアジア大陸に一歩を踏み出す
※
そっとしておいて 清岳こう
草原のただ中
少年が両手を広げうつ伏せになり寝ころがっている
地球のきしむ声を聴いているのだ
※
大皿で 清岳こう
運ばれてきたのはあばら骨だった
羊の心臓をけなげに守っていた
羊の小さな肝っ玉を心から愛していた
左右対称の空洞だった
湯気のあがる肝臓に 胡椒・腐乳豆腐(とうふペースト)・黒酢をまぜソースを作り
あばら骨の肉をむしりあばら骨をほおばりすわぶり指を脂でにぶくひからせ
その夜以来 若い羊がささやくのである
私の耳をくすぐった 薊の歌はどこに行ったの
私の巻き毛に止まった 蟋蟀のゆくえを探して
私の瞳に住んでいた ヒマラヤを舞う大鷹のはばたきを伝えて と
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