夕月 丸山由美子
山河のページをめくりかけたままの
指の形をして
夏の白い娘が断崖から落ちていく
咲いている間ずうっと
名前も知らなかった野の花が
びっしりちいさな実をつける頃
※
この詩は余白のうつくしい詩です。
それは<夕月>というタイトルに対してまず私そう感じます。
<夕月>は余白のなかで漂っている。そんなふうにイメージされるのです。そして、この余白のイメージ
はこの詩全体を支えているような感じがします。
最初の連の一行目と二行目、二行目そして三行目が終わったあと、ここにはひそやかではありますが
しかし確実に余白があります。
そして初めの三行とお終いの三行、この間にはここにも余白があり、それは大きな深淵のような感じ
がします。
恐らく、この詩人はこの余白をとおして、不思議の国のアリスが鏡をとおしてもう一つの世界へ入って
いったように、大自然のなかへ入っていったのではないでしようか?
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