あさのひかりをあなたに 入江由希子
あなたは もう夜明けを見ただろうか
だれにももとめられないままあけていく夜の涙が こぼれ
うすいそらが あおく あおくひろがっていく
かなしみのうえにも かなしみが
かさねられてしまうときにも
どうしようもなくたちふさがるさみしさや
うめようのないむなしさ いたみ
ひかりに背をむけ 耳をふさぎ
うずくまるときにも
わすれないで
しんじることのできないときでも
わすれないで
やさしさのうえにも やさしさを
あいするよりも もっとあいされて
あなたに ふれていく
あなたが ふれていく
そのひかりのはしで
うまれつづける夜明けを わすれないで
※
いい詩だな、 この詩を初めて読んだとき、私は思いました。それは「傑作」とか、「名作」というのとは、ちょっと違った感じで、もっと親しみのある身近な感じです。
しかし、それでいながら、私とは違う、そういう感じです。妙なたとえをしますと、ひと組の幼い子供と親
がいて、思わず私が「いいお子さんですね」といいたくなるような、そんな感じです。
これはその理由をいってもなかなかわからないかも知れないし、私自身うまく説明できないのですが、
いい詩だなという感じは、全く間違いないと思います。
ただ、これだけは言っておきたいと思うのですが、ひとや物事を思ったり、感じたり悲しんだりする、
本当にするということは、それは言葉をとおしてであるということです。
このひとはこの詩を書いたとき、自分の心に素直に、それと同じように言葉に素直にあいたいしたのではないかと思います。
自分と言葉とどちらが先にあるのか、本当はわからない、そんな感じがする、それはいい詩であるということではないかと思います。
幼い子供はどこまでが自分で、どこまでがお母さんかわからない、 そんな子供がいいお子さんですねといいたくなるのです。
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