最近、とても変なことを考えることがある。たとえば、私は「しろくまのおかおえほん」とか「しろくまの妹が生まれたよ」とかいう絵本を翻訳したりすると、まるで次から次へ「しろくまシリーズ」がでる。
確かに、しろくまたちは危ないし、氷山から落ちたり、飢え死にしたりしているらしい、しろくまたちのことを考えたりすると、絵本なんか出している場合ではないような気がする。奈良の鹿たちのことをテーマにしたドラマができたりしている。また、CBCではどこかの動物園でラッコの親子がゆったりとみずのなかでランデブーしていたのか何回も放送されたりして大変愉快でした。
このようにこの頃人間などよりよっぽど動物や植物がテーマになってきているような気がする。人間は人間に飽きたのだろうか?
まあ、そういうわけにもいかないけれど、いつか図書館でこどもの本で見たきれいな絵本が思い出される。その本は、きれいなマフラーをした女の子が、ペンギンをみていて、どうして、わたしはペンギン
でないのかしら? ペンギンならこんなに寒いとき泳いでも平気なのに、とおもうわけです。
それで、象、きりん、さる、かば、ばんだと次々に会い、どうしてわたしはかれらではないのかしら?
と思うわけ。とても目のさめるようなきれいな絵本だったので、私はいつまでも、いつまでもぼんやりみていたわけだけれども、動物になりたくてもなれない女のこは突然「ま、いっか」というわけですね。
ずっとたってから、なんだか、びっくりしたわけですね。
すると、このあいだ、テレビでおかあさんのおなかの中に、ちいさなカメラをいれて、赤ちゃんの空豆
のようなときから、撮影したわけです。私は人類が初めてダ・ビンチの解剖図、おなかの中の赤ちゃん
を見たときよりもショックを受けたの、その小さい生き物、つまり、胎児の喉のあたりに確かに一瞬、
エラがみえたのでした、それは一瞬で消えましたけれど。こうして人間の胎児はエラができたり、尻尾
が生えたりして、あるいは手にミズカキができたりして、だんだん人間の赤ちゃんになることでした。おど
ろいたことに、人間だけではなく、生きものにはみんな遺伝子があって、それぞれ全部違うということでした。まるでトマトも一個一個違うパスワードやIDをもっているみたいに。
しかも、この遺伝子はこの地球上のすべての生き物の遺伝子をひきついで、そうして、もしかしたら、
波のようにうねりながら進化しながら、ちゃんとお父さんやおかあさんからひきついで、たった一個の遺伝子を持って、生まれてくるわけですね。
つい最近まではそんなこと知りもしませんでした。急に文学の人間と神しかいなかった世界から、アリンコやら、鹿男あおによしなんかがあらわれてきて、すこし気持ちが悪いくらいです。
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