還暦をこんなふうに面白く捉えた詩を読んだことがなかった。びっくりである。
輪郭 原田瑛子
——還暦
まぶしさに目をほそめていた
いくさきに真っ白く光っているものの
とらえられない輪郭を
とらえようとして
いっしんにみつめていた
あしもとにはみしらぬ時があった
風のような果実のような
垂直のような
たおやかないいしれぬものたちに
囲まれていた
あるいたそして
ここに来たのだ
ここにいる
いま
後ろ手に
ざわざわとひきよせられる
時たち
ゆっくりと回転しながら
まきもどっていくモノクロの画像
にわかにわたしのうちがわをおおう
夕やけ だが
微熱をおびてなおも背筋をのばす
ものがいる
(そうよ
そうすてたものでもなかったのだけれども・・・)
岩にうちつけられたままのこころや
むきあえなかったままのゆめ
が輪郭だけの星砂になって
ゆびのすきまからおちていくのを
みている
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