「ちいさな川は…」新川和江  まねしたくなる詩

「ちいさな川は…」 新川和江
ちいさな川は
一日じゅう うたっている
鳥が はすかいに                                                   つい! ととべば 鳥のうたを
白い雲がかげをおとせば 雲のうたを
風が川面を吹いてわたれば 風のうたを
女の子が花を浮かべれば 花のうたを
夜がくれば 空いっぱいの星たちのうたを
 
 他のひとの作品を読んでいて、「こんな詩を書きたいなあ、でも、書けるかな? 書けないかも知れない。
でも、やっぱり、いつかかけるといいなあ」と思う詩に出会うことがあります。この詩がその一つです。
 こういう詩は、なぜ好きだとか、どこがすばらしいとか、実はよくわからないのです。
 でも、何かとても鮮やかな体験みたいなものがあって、それをあれこれいっても仕方がないとさえ思って
しまいます。一陣のさわやかな風が体を通りぬけていくような感じで、そのあとには何ものこらないのですが、通り抜けたという感じはとてもはっきりしています。
 私が詩を書き始めたのは、これと殆ど同じような体験からだったのではないかと思います。こんな詩が書きたいな、でも書けるかなと思って、詩を書き始めたような気がするのです。
 ただ本当に゛こんな詩″が書けたかどうかわかりません。
  
 また、ある時は殆ど、まねのような詩を書いたこともありますが、それでも、私はとてもどきどきして、もしかしたら私にも詩が書けるかも知れないと思ったりしました。
 この詩人には他にも「水」をモチーフとした作品が幾つもあります。それらの作品を読むと、私はいつも、
生と死、現実と幻の世界を旅しているような、能を味わっているような不思議な気持ちになるのです。 
 そして、実はこの詩にも同じようなものをかんじます。 この詩は子どもにもよくわかることばで書かれて
いますし、実際そのとおりだと思いますが、私にはなんとなく、生と死どころか、無限のあの世への旅が感じられるのです。
 それが、他のどの詩よりも自然に書かれていて、この詩は私にとって、別格に思えるのです。
 どこがすばらしいかわからないといいましたけれど、それでも、今回は
 <鳥が はすかいに
  つい! ととべば> と
<夜がくれば 空いっばいの星たちのうたを>の部分が特に好きです。
 次の時は、どこが好きになるかわかりませんが。
 
 
 

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