「ふしぎなクミコ」のなかで、20こぐらいの質問があった。 たくさんいい質問があり、その質問は友達であるわたしにも日本語に訳された紙に書くように言われた。その中でたったひとつよく覚えている質問がある。「暴力について、あなたはどう思いますか?」 クミコの答えはこうだった。「暴力をわたしは憎む。
暴力はなんとしても拒否しなければならない。もしそれができないないなら私には死という代償がある。」
あの頃、クミコは28歳ぐらいだった(昨日、25と書いたが間違いだった)なんという強いことをいうひとなんだろうとわたしは思ったが、お互いに年をとり、40歳ぐらいになってからこんなこといったんだよ、というと「なんて生意気な、恥ずかしい!」と言った。質問も答えもその時、その気分によって違うのである。
わたしは何と答えたかといえば「暴力は私の中にもある。この自分のなかの暴力をいつも調整するのはとてもむずかしい」わたしは23 歳だった。
映画は警察の剣道の道場で警官たちがお面をかぶって練習している場面が長い間とられていた。クリス・マイケルは竹の刀のバチバチバチという音になにかを感じたのだと思う。それから、オリンピックの会場の見物席のたくさんのひとのなかのクミコと鳩があがる瞬間が撮られていた。ちょうどおなじような瞬間
を谷川俊太郎さんが今監督のオリンピックという映画の中でフイルムを2分かんぐらいの長いシーンで撮っていた。それから、日光のお祭りとモノレールがでてきてずっとクミコが出てきた。モノレールのとき、武満徹さんのふしぎな音楽がきこえてきたのだった。その音楽はこれから日本という国が経済的に豊かに
なろうとし、国際社会に参加しようとする緊張感にあふれていた。まさか、この映画が終わったあたりで
彼女がフランスにでていこうとしているなんて夢にも思わなかった。わたしはひとりぼっちにとりのこされてしまった。
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