すこし夏バテでした。ずっと前にサイードというひとの「遠い記憶」という本を読んだことがありました。とてもわかりやすい自伝のような本で、わたしは感動して「サイードから風が吹いてくると」という詩を書いたことがありました。その時はサイードが小さいときからことや、アメリカに行って活躍することの具体的な体験
にとてもとても感動したわけですけれど、ごく最近なって彼のお父さんのことが気になりました。とにかく
サイードの一家はパレスチナにすんでいましたが、だんだんそこを追われてエジプトのカイロなんかで文房具の商売をして、しこたま儲けていました。お父さんは若い頃アメリカの兵隊に志願してアメリカのいろんなところに住んでいました。そこでかれアメリカ式の商売をして一旗あげたわけです。パレスチナというところは昔イエスが住んだところですから、なんだか男の国でやたらめったに親戚やら知り合いが多いわけでエドワード・サイードなんてその息子に名前をつけて、エジプトのかいろのイギリス系の学校にいれていました。それから、夏になると、レバノンの田舎に休暇をとりにいくわけですね。それでそのお父さんは
お金持ちなのによれよれの洋服をきて、子だくさんでなんにもしないでぼけーとしているわけですね。
どうして、あのお父さんは一家の柱で国を追われ、それだけでなくお金持ちで、それなのに絶望的な顔をしているのだろうとおもったわけですね。それはかれが一流の実業家なのに故郷がなく、家ももてず、
イスラエルに全部とられて流浪の民におちぶれているからです。やがて、かれは一人息子のサイードを莫大なお金を使って、高校から十何年もアメリカの学校にいれるわけです。お父さんがお金を稼ぐときはただ一家の暮らしを支えるだけではなく、なにか生き甲斐のようなものがなければならなかったのです。かれの
目的は巨大な富を息子の教育に費やすことだったわけです。まあ、それは大体成功したわけですが、
その気の遠くなるような大事業のことを延々とかいているサイードにも感心したわけです。お父さんは一日の仕事を終える前にお昼頃どこかへ消えてしまい、一秒たりともう働きたくないのですね。そして、大部分の男のひとたちが砂を噛むような労働をしているのだと思って、お金の力ってすごいなとおもったわけです。あの写真で苦虫をかみつぶしたお父さんは成功していながら、大変だったのだなあとおもったわけです。わたしもすこしお金をかぜごうかなあ。
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