近藤久也さんの詩集「伝言」を読んで、いい詩をみつけたので紹介してしまおう。このコトバのレンズは何を発見させてくれるのか。
生垣のある家
ああまた
生垣のある家に住みたいな
地面に覚えたての字を指で書いたり
蟻たちが死んだミミズを担いでいくのをみていると
生垣の向こう側を見知らぬひとたちが
意味の解らないことばかり喋りながら
通り過ぎていく
ウバメガシの隙間から
ちらちらみえる足首は
知ることもない不思議な生き物
飼っているわけではないんだけど
ウバメガシのジャングルで
昼寝していた青大将の
ぞっとするほど
つめたい目
(この世界の秘密の一角を、こっそり透明な小さなレンズでのぞいたときのわくわく感。これはまさに子どもの目。それとも青大将の「つめたい目」かな。)
朝
馬が朝
川べりにやって来て
首をのばして水を飲んでいる
黒い馬
白い馬
茶の馬
灰色の馬
斑の馬
次から次と
朝霧の中
何頭も何頭も
誰かの使いのように
みえないところから
いそいそとおどり出てきて
並んで水を飲んでいる
後から来る馬が入れるくらい
隙間をあけてやり
一列に並んで飲んでいる
川面に視えなくなるくらい遠くまで
馬が映っている
後から後から馬が
やって来る
ひとはいない
(これも映像的だが、ファンタジックでもあり、コメントのないのがいいなと思う。私は今朝、すごく大きな樹のてっぺんあたりに,ゾウが何頭か見え隠れする夢を見たけれど、なぜかそのことを思い出す。この詩集にはほかにもおもしろい詩がいっぱいある。)
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