奈良で正倉院展を見た。2、3年ぶりかもしれない。秋晴れに恵まれた一日。博物館を出ると、ナンキンハゼ(通称?)の大木の紅葉と白い実が午後の陽に映えて、とても美しい。奈良公園にもその時間は人影が少なく、鹿に餌をやる旅の人がちらほらいるくらい…。しばらくベンチでのんびりする。
翌日は京博で「最澄と天台の国宝展」を見る。延暦寺の聖観音立像をはじめ何体ものすぐれた仏像にお目にかかれた。(私の好きな運慶作の円成寺大日如来の面差しに似た横蔵寺の大日如来なども。)その道のプロである連れにうるさく説明を求めつつ、昼前までかかって、ゆっくりと見る。相棒がそうであるからといっても、私は門前の小僧までもいかない知識なので、今回ははじめからその気になって、仏さんとじっくり相対した。最澄と空海についてももっと知ってみたくなる。書物でだけでなく具体的な作品と引き比べて見ると、面白みが増すのかもしれない。
午後は大原の三千院まで行って、紅葉の走りに触れた。けれど一番印象的だったのは、国宝の往生極楽院(阿弥陀堂)の御堂だった。もちろん阿弥陀三尊はすばらしかった。が、その御堂内部の船底天井や垂木が群青などの美しい極彩色の花園の図で彩られていることが、去年の赤外線による調査で判明し、その一部残された部分を照らして見せていただけたのがなにより印象的だった!まるで感じが違うのでびっくりする。来年は御堂を別の場所に復元模造して公開する由。
その頃の人々はこのようにも華やかで色彩溢れる極楽浄土を夢見て、阿弥陀様に導かれて成仏するイメージを抱いていたのだなあ…と。いま私たちのみるその頃の仏像の多くが、このようにも金ぴかであったり、極彩色であったりしたのだから、なんという美意識の差だろう。日本的といわれる,ワビ、サビの感覚について、あらためて考え直してしまった。
それにしても、三千院の境内は丈高い木立のなかの空気がひときわ澄んで、すがすがしい。
今回は、短いがよい旅をした。何年ぶりかで、京都に住む旧友?のKさんと電話で話し、近い再会を約したことも嬉しいことの一つだった。
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