銀座のポーラミュージアムアネックスで、能面展を見る。亡き兄の松本高校時代の友人石関一夫さん製作の増女、乙御前をはじめに見る。乙御前のひょうきんさに笑い、増女の風格に細部まで瞳を凝らす。さらにギャラリーに並ぶ能面たちのかもし出す静謐さと、意外なユーモアをもたのしむ。一緒だった唐澤秀子さんと、悲しみや怨念などのマイナスの情念を表す面(たとえば泥眼など)の表情にはかえって訴える力の強さを感じるなどと話し合う。私は眉間にしわを寄せてこちらをひたとみつめる「増髪」の面にひきつけられたが、これも決して柔和な表情ではない。
その後ぶらぶら4丁目の方へ散歩して(唐澤さんも私も銀座は久しぶり)「蔵人」でランチをとり、その後「壱真」でコーヒーを飲んで夕方まで延々としゃべる。ファンタジーについて,彼女が子ども時代に熱中して読んだ「モンテクリスト伯」について、物語のおもしろさ、それから詩についての示唆的な話(人類創生のころの記憶にひそむさまざまの種のイメージを喚起する詩のこと)、ヨーロッパ文化とキリスト教が現代にもたらしたもののこと、彼女の入った合唱団のこと、いつかフランスのある地方のホテルにいっしょに行きたいという夢、女がものを書くには一人の時間、空間が必要ということ、ETC.。それから限りなくいろいろと…。私の詩集の編集者だった彼女に今回もまた活を入れられる。
久しぶりに友人と、仕事と関係なく、ただ純粋に話をする時間を過ごすことをした。そんな日はとても充実感があって、日ごろのこまかいしんどさも忘れてしまう。それにしても、ただ友人と話すというだけの時間をもつために出かけるということは、今は案外少ないかも知れない。何の目的もないこういう時間に対して、忙しい私たちは案外世知辛いのだろうか。
-
最近の投稿
カテゴリー
最近のコメント
- 風のほとりで に ruri より
- 風のほとりで に Atsushi より
- 岡野絵里子『陽の仕事』 に 青りんご より
- 岡野絵里子『陽の仕事』 に eriko より
- ささやかなこと に ruri より
アーカイブ
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年7月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2013年11月
- 2013年9月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年3月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年4月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年9月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2009年12月
- 2009年9月
- 2009年8月
- 2009年7月
- 2009年6月
- 2009年5月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年9月
- 2008年7月
- 2008年4月
- 2008年3月
- 2008年2月
- 2008年1月
- 2007年12月
- 2007年10月
- 2007年9月
- 2007年8月
- 2007年7月
- 2007年6月
- 2007年5月
- 2007年4月
- 2007年3月
- 2007年2月
- 2007年1月
- 2006年9月
- 2006年8月
- 2006年7月
- 2006年6月
- 2006年5月
- 2006年4月
- 2006年3月
- 2006年2月
- 2006年1月
- 2005年12月
- 2005年11月
- 2005年10月
- 2005年9月
- 2005年8月
- 2005年7月
- 2005年6月
- 2005年5月
- 2005年4月
- 2005年3月
- 2005年2月