軽井沢

この間の塩壷温泉への旅が尾をひいて、また突然軽井沢を訪ねた。
前夜までの雨が急に上がって、青い空に紅葉の木々の姿が映える好天だった。
ところで軽井沢はこんなに猿が多かったのか…と驚いたのだが、散歩中にも突如猿たちが奇声を上げて喧嘩を始めたり、ホテルの庭で親猿,子猿が10匹以上も戯れていたり、木々をかけのぼったり、枝でブランコをはじめたり…と、近くにいる人間のことなど目にもくれない様子。今は木の実がたくさん生っているので、さぞや大御馳走なのだろう。その遊びの様子は見ていて飽きない。
シーズンをいささかはずれているせいか、ホテルの近辺は静かで、頬に冷たい風もまだ心地よい。雲場の池は紅葉にはまだ少し早めで,鴨たちがのんびり泳いでいる。リンドウもまだ少し咲き残っている。
旧軽井沢に出て重文の旧三笠ホテルを見学した。建築からちょうど今年で100年。歴史的な由緒のある建築は、なんだか物語の中にでも出てくるような雰囲気だ。犀星や立原道造や堀辰雄、そして中村真一郎などの若き日の写真や資料の展示された一室もあって、古色蒼然とした建物の隅ずみから、彼らの語らいの声が聞こえそうだ。ここは軽井沢の鹿鳴館のような存在だったという。
純西洋式木造ホテルとしてホテルはいま重要文化財となり、澄んだ秋の日差しのなかにぽつんと置かれている。まるで童話のなかの一シーンみたいな雰囲気さえ持っている。それは、たとえば廃屋とか、滅びつつあるものの静かな気配にもみちていて、夕日のなかに刻まれた懐かしい記憶みたいでもあった。
歩きつかれて、昼食は川上庵の天ざるにした。

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