セゾン現代美術館(辻井喬 オマージュ展)

11月24日、軽井沢のセゾン現代美術館を訪れ、《堤清二/辻井喬 オマージュ展》を見た。
その日が会期の最後の日だった。
美術館は葉を落した木立に囲まれ、会場はゆったりした清楚な雰囲気で、シーズンオフ
の避暑地らしく、客も少なかったが、その分ゆっくりとマイペースで豊かな空間を味わうことができた。クレー、ミロ、エルンスト、マン・レイなどにはじまり、イヴ・クライン、マーク・ロコス、サム・フランシスなどの現代美術を経て、荒川修作、中西夏之、宇佐美圭司、加納光於などの日本の画家の大作も数多く見られた。
しかし私がもっとも心奪われたのは、辻井氏の自筆原稿や、数えきれないほどの著作物
(詩集や文学作品などを中心とする)、そして南麻布の書斎を復元したという空間におか
れた彼のデスクであった。愛用されたと思われるそのデスクには、いくつかの傷跡なども
見てとれ、創作に費やされた詩人の孤独な時間とその営為が語られていた。
「二つの行為(経営と詩を作ること)は本来矛盾するべきものではなく、それが矛盾して
感じられるところに、時代の様相がある」という彼の言葉が引用されている。
そうなのだろうか?
一人の人間が自己の運命を生き切ること、そして表現し続けることとは?
深い感慨を与えられた一日だった。

翌日は冷たい雨だった。濡れていくホテルの中庭の木立を見ながら、一つの星がふいに
消え去った後の空白感に包まれた。

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