ショパン伝説のラストコンサートというのを聞きに行った。パリで1848年2月16日に行われたショパンのラスト演奏会を、作家の平野啓一郎が再現する歴史的なコンサートとのことだった。平野啓一郎は長編作「葬送」でショパンの生涯と芸術を描ききったといわれているが、昨日も舞台上でナビゲーターの役を引き受け、自作の朗読も行った。演奏は宮谷理香(ピアノ)、江口有香(バイオリン)、江口心一(チェロ)。私の好きな舟歌やプレリュードをきけたのは嬉しかったし、またチェロソナタがとても新鮮だった。
特に心に残ったのは、ショパンが生涯に4回しか演奏会を行わなかったこと、その理由は大勢の前での演奏会が嫌いだったこと、演奏をするとしたら数少ない親しい知己のひとびとだけを前にやりたい、というタイプだったこと。そしてショパンはこの演奏会の翌年に他界しているということ。
3時間に近いコンサートの帰り道で偶然出会った野毛の「OBSCUR」という店での食事とワインがおいしくて、ここではジャズをBGMにして、コンサートの意外な「あとがき」?を読んだ気がした。
オブスキュールとはフランス語で”暗がり”とか”おぼろげな”とか、あるいは(作品、言葉などが)難解、曖昧という意味もあり、店がその名を選んだのは、暗がりのなかに差す光を意図しているとか。煌々とした明るさでなく、オブスキュールである故に魅力があることも。
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