影の鳥(Shadow Birds)

    影の鳥
                          水野るり子
鳥は死んでから 
だんだんやせていくのです
  町には窓がたくさんあって
  夜になるとどの窓のおくにも
  橙色の月がのぼります
  でもお皿の上の暗がりには
  やせた鳥たちが何羽もかくれています
  鳥たちは
  お皿の上にほそい片足を置いて
  大きな影法師になって
  月のない空へ舞い上っていくのです
死んだ鳥たちは
雨の降りしきる空で
びっしょりぬれた卵を
いくつもいくつも生むのです
そうして冷たい片足を伸ばして
沈んでいく月をのぞくと
深いところには
人間がいて
窓のなかで
ちぢんださびしい木を切っています
         Shadow Birds
        (Translated by Edwin A.Cranston)
Birds after dying
gradually grow thin
   In the town there are many windous
Deep in every one at night
an orange moon rises
But in the dark on the platter
a flock of thin birds hids
  Each bird stands
 with one thin leg on the platter
  becomes a large, black shadow
 leaps toward a moonless sky
The dead birds
in the rain-gusting sky
lay dripping-wet eggs
clutch after clutch
  And each stretching out one cold leg
  they peer at the sinking moon
  In a deep place
  are humans
 inside windows
  cutting shrunken, lonely trees
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「影の鳥」 は初期の作品です。一枚の画を描くような気持ちで自分のなかの
    イメージを詩にしました。詩集『ヘンゼルとグレーテルの島』 に入れました。
  

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