去年9月18日に蛹化したキアゲハの子が一匹、なんと6ヶ月と10日ぶりに、我が家の隅の飼育ケース
のなかで羽化した!3月27日の夜明けのこと。
書庫の隅にケースを置いてから、死んだか生きてるか分からないまま一冬たち、半年もの間何の変化も
なかったので、もう死んでいるのかも…と思いながら、でもさいごの望みはすてないままだった。だから朝
7時半ころ、いつものようにカーテンを開けたとき、何かケースの中にちがう気配を感じ、立ち止まっての
ぞいてみたらそこにキアゲハが一匹!もう我が目を信じられなかったくらいだった。やや小さめだが、もう
ちゃんと翅も開いている、うつくしいキアゲハなのだった。
さっそく明るい窓辺に置いて、ついでに写真をとり、まだ寒いので、しばらく家の中においてから、8時半
過ぎに戸外に出して、ケースのふたを開けると、数分もしないうちに、あっという間に飛びたち、高々
と上空へ舞い上がり、南の方向へひらひらと飛び去ったのです。
桜の花も5分咲き、空気はまだ冷たいが、家々の庭には花壇の花も咲いている…、なんとか春早い
この寒さを乗り切って、1週間〜10日間ほどの寿命を満喫して欲しいと、これはまるで親心のようであ
る。それというのも、去年は20匹近いキアゲハの幼虫がいたのに、この一匹を残してみな死んだり、行
方不明になって、辛うじてこの一匹だけがサナギになったのだから、いわばこの蝶は右総代の貴重な存
在だったのだ。去年は餌のイタリアンパセリが途中で不足して、コンビニなどで買いしめてきたのをやっ
た直後これ以外はみな全滅したわけだった。行方不明も含んで。
だからこの一匹が飛びたったときは、ほんとに去年から引きずっていたキアゲハコンプレックスから、一
気に解放されたような晴れ晴れとした気持ちになった。そうでなくとも、木っ端みたいだったサナギが、ふ
いに殻から解き放たれて空高く飛び立っていく姿はすばらしい。日ごろのストレスも忘れるのだ。それに
今回のこの羽化への思い入れは特別だったなあと今にして思う。
それにしても去年の夏のサナギは8日間で羽化したのに、今度のサナギは、冬とはいえ、羽化まで、
延々190日以上耐え忍んだわけだ。自然とは本来タフでかなりの適応力をもっているものなのだと感心
する。
これは昨日の朝の出来事。でもその余韻は、いまも私のなかへ明るく響いている。
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