旅のこと

 このところペッパーランド終刊号の「夢、隠された森」というテーマでの詩をなかなか完成できず、いたずらに日を過ごしていたので、ブログで旅のことを書こう,書こうと思いながら日が経ってしまった。
気がつくともう旅から帰って、10日近く経っている。
 それでもまぶたの裏に車窓の立山連峰や、久しぶりの前田ちよ子さんを囲んでの同窓会?的情景がついさっきのことのように浮かんでくる。帰ってから彼女の詩集「昆虫家族」をあらためて読み直してみて、彼女の独自な感性をまたあらためて感じた。書かないでいることが、惜しまれる。今はいろいろな事情もあるだろうけれど、必ずこのような独自な表現の場に帰ってきて欲しいと思う。
 富山では県立近代美術館でルオーの大きな版画展をやっていて、どちらかというと敬遠しがちだった宗教的なものより、サルタンバンクやサーカスなどをテーマにした市井の人々の生気が立ちのぼる作品群に心を引かれた。さらに常設展では、思いがけず初めて出会ったクレーの画や、デルボー、エルンストなどの魅力的な作に出会えて嬉しかった。見終わってから、荒川みや子さんと、野の花の生けられてあるティールームで、ルオー展にちなんだ《聖ヴェロニカ》という特製コーヒーを飲みながらいっときおしゃべりをした。また、富山では池田屋安兵衛商店で、かの越中とやまの反魂丹を買うことができたので、これからしばらく、安心して?飲みすぎることができるかも!
 金沢では室生犀星の記念館が印象的だった。あっけらかんとした散文的な金沢二十一世紀美術館とは対照的に、静かでこじんまりとして、犀星の手書きの原稿や、朝子さんの語るビデオなど…、いかに犀星が愛され、その詩が大事によまれているかを感じた。
 
そして今回の旅の圧巻は、その夜、宿の近くでとった夕食。地酒を飲みながらの、この地方の今だけとれる白えびのから揚げや、ホタルイカ、のど黒の塩焼き、山菜のてんぷらなど、あまりにもぜいたくな晩餐。これは今回の旅のクライマックスかも…ああ、単純。
 なぜかこの富山、金沢の旅の記憶はとてもあかるい。五月の光のなかの緑と、日本海の青と、そして雪をかぶった立山連峰の白と、に縁取られて、私の記憶にくっきりと残りそうだ。
 それにしても、「前田ちよ子さん、待っているから、復帰してね。」

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