Fiddle-Faddle

 ペッパーランド同人の荒川みや子さんが、今度「Fiddle-Faddle」という個人誌を創刊された。小さくてお洒落な詩誌だ。すべて手づくり…印刷も装丁も。それを一冊づつこよりで綴じて、一枚の葉っぱがふわりと舞い降りてくるように届けられた。
 彼女はこれをとても楽しみながらつくったとのこと。ほんの数頁のかろやかな詩誌だが、荒川さんのながく暖めてきた大切な夢がやっと孵ったようだ。こよりを探すためだけでも、あちこち、街じゅうを歩き回ったのではないか。
 40部発行の「Fiddle-Faddle」。巻頭には彼女の詩一篇。頁をめくると、私の第一詩集「動物図鑑」についての評が書かれている。次号から私の仕事について、何回か連載してくださるとのこと。これは大変ありがたいことだ。 詩とは作者だけのものでなく、読者(評者)によって光を当てられることで、その意味もひろがるものであると実感する。
 こういう彼女の仕事で一番嬉しいのは、詩作品だけでなく、それが載っている場(詩誌全体)の隅々にまで、作者の歓びの気配が感じられること、そこからからだの声が響いてくることだ。
 「Fiddle-Faddle」とは、辞書でひくと、(ばかばかしいこと、とるにたりない些細なこと)という意味がある。こういう名づけ方も彼女らしい気がする。(FIDDLEはヴァイオリンのもう一つの呼称)
 数日前、発行を祝って、横浜の「カサ・デ・フジモリ」で一夜、スペインワインを飲みながら、彼女とあれこれ詩の話や、(とるにたりない些細な話)などを愉しんだ。久しぶりのスペイン料理もおいしくて、店の陽気な雰囲気や、一仕事を終えた彼女のリラックス度にも感染して、一夜の食事と会話を心から楽しんだ。
 

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