8月19日から21日にかけて、11月の国民文化祭のための詩の選考を頼まれ、山口を訪れた。新幹線で4時間半かかる。おかげで行きと帰りにそれぞれ一冊ずつ新書版の本を読んでしまった。
山口市は私には初めての地でもあり、選考会の件もあり、やや緊張していたが、いまはなんとか無事に終えてほっとしている。それにしても作品を選ぶということは難しいことだ。選者個人の感性の幅の限界や、個性の差などをいやでも実感する羽目になる。高校生・一般の部では経験という素材の迫力と、詩としての完成度との間で悩むことになったり、小学生の部でもその年齢と作品内容のアンバランスなどということも考えざるを得ないケースも出てくる。
私は、他の選者の方々の作品に対する謙虚な姿勢に教えられることが多く、なかなかよい体験をしたと思っている。また詩という形でのみあらわせる経験を、こんなにも多くの人々が内面に抱えて一生懸命に生きていることはすごいことだと思う。それをコトバにしなければ、意識しないままにことなく、一生を終えてゆくこともできるのだが。コトバにすることと、コトバにしないこととは、その人にとって、人生をまったく別のものにしてしまうともいえそうだ。
山口では中原中也記念館が印象的だった。モダンな建築で、いま「青山二郎と中原中也」という特別企画展を開催中だった。貴重な手紙や写真などの資料を展示していて、時間をかけてゆっくり見ることができる。生原稿の魅力に今更のようにひきつけられる。
今度の会合で出会った、徳山の小野静枝さんは、「らくだ」という女性詩人たちの同人誌をもう30年も出し続けておられる方だ。二人でゆっくり食事をしながら、女性詩のことなど話し合うことができたのは、今回の旅の大きな収穫でもあった。
3日目には横浜から合流した絹川さんと、瑠璃光寺や雪舟の庭、サビエル大聖堂などをタクシーを頼んで回ってもらった。その日も、山口の空は青く、入道雲がわきたち、クマゼミが鳴き、ぎらぎらの真夏の一日だった。真っ青な空と雲を背景にした瑠璃光寺の五重塔のうつくしさや、うっそうとした木々の緑を吹き抜けてくる風の音が心地よかった。
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