先日紀尾井ホールにモーツアルトの曲を聴きにいく。クラリネット協奏曲とヴァイオリン協奏曲三番がメインのコンサートだった。クラリネットの演奏では、特に第二楽章のピアニッシモの音色の繊細な美しさに引き込まれうっとりしてしまった。
ヴァイオリン演奏はジル・アパップ(Gilles Apap)。1963年アルジェリア生まれのフランス人。今はカリフォルニア在住とのこと。即興の妙技と演出満載の演奏で人を驚かせるといわれるが、ほんとうにダイナミックな舞台演出には驚く。特に第三楽章のカデンツァは型破りで、口笛とうたで入り…つづいてコサックのダンス曲みたいなたのしげなメロディーやリズムが飛び出し、次々と変化しながら、延々10分以上もとどまるところを知らない。初めは唖然、次に俄然たのしくなり客席はみな固唾を呑んで聴き入るばかり。演奏スタイルも変わっていて、楽団の背後はもちろん、その間を通り抜け、一人ずつに目配せ?しているような感じ。
もちろん演奏はすばらしく、その華やかなきらめきのある響きは心を吸い寄せる。バイオリン協奏曲三番は私の一番好きな曲だが、このような音色で聴いたのははじめてかもしれない。きっと彼は音楽の精を自分のなかに住まわせているのだ。音楽のせまいジャンルの枠をこえ、さまざまな民族や風土を横断して風のように行き来できる自在な音楽への精神を育てているひとなのだ。モーツアルトもこれをどこかで聴いて大喜びしているだろうなあ…などと思った。
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