《政治的な作家、あるいは政治的な芸術家とは、作品中になにか政治的なことがらを登場させる作家ないし芸術家である……こういう平板な見方にはぼくはいつも逆らってきた。だったらたとえばゴッホの「ひまわり」の絵はどんな意義をもっていたかと自問してみればいい。平板な芸術観からすれば、あれは「社会的視点には関連しない」絵と言われるだろう。ひまわりの花以外、なにも描かれていないんだからね。だがしかし、ゴッホの「ひまわり」がヨーロッパで引き起こした意識変革の事実は、おそらくベトナム反戦プラカードの全部を集めたものより大きかったと思われる。一枚の絵によって広汎なひとびとの意識が変えられてしまうなんてことを、平板な頭脳の持ち主にはわかりっこない。ヴァン・ゴッホがもたらしたのは、見る力の新生だった。美とはなにかの新しい概念、そしてその帰結としての新しい意識内容、新しい意識フォルムを,ゴッホはもたらしたんだ。》
以上はミヒャエル・エンデの『ファンタジー/文化/政治』からの言葉だが、ずっと以前、対談集『オリーヴの森で語り合う』で出会ったときから強く印象に刻まれている。
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