見たい見たいと思っていた映画「ヨコハマメリー」を昨日やっと見ることができた。ようやっと映画館も空いてきている。映画を見るってほんとに気持ちの余裕が必要だ(少なくとも私の場合)。
私もメリーさんとは2、3回伊勢佐木町やJRのなかですれ違ったことがある。そのたび白昼夢を見ているような不思議な気分になった。松坂屋デパート、馬車道、伊勢佐木の通り。そこに重なるように占領下の、今はない根岸家の情景の再現。猥雑で活気に満ちた街頭の人々のかもし出す熱気。
そして一度だけきいたことのある永登元次郎さんの熱唱する「マイウェイ」には涙が滲む。今はその彼もメリーさんもいなくなってしまった街。最後のシーンで松坂屋の前を忙しげに歩くひとびとの間を幻のように過ぎていくメリーさんの姿は妖精のようで、悲しい。戦後から街娼として、年老いても街に立ち続けたメリーさん。忘れることのできない時代の証人である。それにしても年老いた彼女の素顔の凛とした美しさに驚く。あれは一体どういうことか。プライドを貫いたひとりの女性はあまりに寡黙だった。
やがてメリーさんも都市の伝説として語り継がれることになるだろう。無数の顔のないひとびとのシンボルとして。私たちはいまその伝説の生々しい息吹に触れているのだ。
多くのドラマを孕んだヨコハマという庶民の街。あらためてその懐の広い活力を感じる。私はたかだか20年ほどしか住んでいないけれど、居住者にとっても、横浜は日常と非日常の二重性を抱えた魅力ある街だ。
帰りに映画館の売店でサウンドトラック「伊勢佐木町ブルース]のCDを買う。
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