ヒポカンパスの会のこと、詩ひとつ

暖かかった昨日の夜、渋谷の「月の蔵」で、ヒポカンパスの詩画展の打ち上げ会を開いた。ちょうど相沢正一郎さんのH氏賞受賞の発表の直後で、そのお祝いもかねて、和やかな楽しい会になった。協力していただいたオリジン アンド クエストの大杉さんも合流、画の井上直さんと共に、詩の世界に風を呼び込む話題も多くて、私にはその意味でもおもしろかった。会話のおもしろさがなければ食事会(飲み会)のほんとの楽しさはないとよく思う。
ところで打ち上げなどというともうこれで終わったような気になるが、詩誌のほうはまだ折り返したばかり。書くのがおそい私としては、まだまだ気をぬけないのです。
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今日は詩誌「六分儀」から、(これは2004年に出たものです)小柳玲子さんの詩をひとつ挙げさせていただく。小柳さん、縦のものを横にして恐縮です。
         木川さん
木川さんはもう死んでしまったので  訪ねていくわけにはいかない
木川さんは時々あの辺りにいるのだ 小さい段ボール箱を置いてこまごましたも
のを商っていることがある 木川さんが木川さんの詩の中に書いているとおりで
ある  これをください  私は影のような うさぎのような 幼いものをつまみあ
げたが 木川さんには私が誰だか分からないのだった 私はとてもあなたの近く
にいるのにあなたはとても遠くにいるらしかった  「あ F ?」とあなたはいった
Fはむしょうになつかしいものの総称だとあなたは書いていたが 私はそれでは
ない  私は……私はたぶんL……とかそんなものだ  かぎりなく清冽なもの
に向かって歩こうとしているもの  そうしてどんどんそこから遠くなってしまうも
の  そんな大多数の名前である  おいくら?私は木川さんに影のようなもの
の値段を聞いた 釣銭をもらう時 「わーこれ新札 樋口一葉だ はじめまして」
ととんきょうな声をだして 私は若い郵便局員を失笑させた
    
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追悼の詩をかくことは難しい。けれどそのひとの詩を知り、その人を愛し、心底その別れを惜しむ詩人のことばはいつまでも影を曳いて消えない。        
                              

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