初めて鳴門のうず潮を見た。イメージのなかで、とても大きな渦を想い浮かべていったのだが、実際は小さいうず潮がいくつもいくつも観潮船の周囲に次々現れるのだった。よく写真で見る直径20メートルもあるような大渦は春や秋の大潮のときに見られるという。けれど自然の造形のすごさとよくいうけれども、ほんとに千変万化する海の表情はスリルいっぱいで見飽きない。
ちょっとうず潮について勉強してみると、「満潮時、幅1,3キロの鳴門海峡へと、太平洋から流れ込む潮流は、その海峡の狭さゆえに淡路島の南の紀伊水道で二つに分岐して、片一方は鳴門海峡の南側へ直接流れ込み、もう一方は大阪湾、明石海峡を経て淡路島を一周し、鳴門海峡の北側に到達する。その間約6時間かかる。その頃南側の方は干潮をむかえるため、海面に1〜2メートルの落差が生じる。その後また6時間たつと潮位が逆転し、ふたたび逆の落差ができる。これが日に4回繰り返されるため、その干満差によって世界にも類を見ない巨大な渦が見られる」とのことだ。
私は一日目は船で、2日目は橋の上から、このうず潮をみたけれども、2日目はあまりの強風のせいか、ほとんど渦らしい渦は見られなかった。いろんな自然の条件によっても左右されるのだろう。
それにしても鳴門海峡はほんとに風光明媚というのにふさわしく、わずか30分の船旅だったが寒風さえも爽快に思える今年の初旅だった。
以前エドガー・アラン・ポーの「メールストロムの渦巻き」を読みながら、それこそ胸の動悸がおさまらない感じがしたのだが、帰ってからもう一回読んでみたくなった。
帰りに大塚国際美術館で、古代から現代に至る西洋美術の傑作の、陶板による焼付けのレプリカをいろいろ見た。とりわけ古代の部屋で見た、デュオニソス入信を表現する「秘儀の図」やエトルリア様式といわれる「鳥占い師の墓」の壁面の図が特に印象的だった。でももっとも心に残るのはゴヤの黒い絵の一室だった。「わが子を食らうサテュロス」はプラド美術館で見たゴヤをまざまざと思い出させてくれ、しばし動けず立ち尽くしてしまった。ここも巨大なエネルギーを感じさせるスケールの大きな美術館でした!
四国徳島への旅でもっとも強く感じたことは、あたたかみのある豊かな風土性で、味でいえば、ホテルで味わった鳴門鯛のさしみ、鳴門若布のやわらかなみどり。鳴門金時のみずみずしい赤い皮のいろ。スダチの香り。目の前の畑で作られると言うラッキョウの鯛味噌漬けなどなど。なぜか気持まで豊かにしてくれた今度の小旅行でした。
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