しばらくブログにご無沙汰しているうちに、もう今年も余すところ一日になってしまった。
先日、中上哲夫さんなどに誘われ野毛での忘年会に参加した。5人でおいしい焼き鳥をたくさん食べ、詩の話などをたくさんした。帰ってくると、さあ詩を書くぞ!という気になったから、きっとおもしろい会だったのだ。来年にこの気持ちがつづくと、いうことはないのだが。
中上さんは、そのときも一緒だった淵上熊太郎さんと二人で季刊「電話ボックス」という詩誌(紙)を出している。一枚の紙の裏表に二人の作品が載っているだけなので気軽に手にして読めるのがいい。ユニークでしゃれた試みだと思っている。今日はその6号から、私の好きな一篇を挙げてみたい。
擬人法 中上哲夫
真夜中のドアの向こう側に
立ち枯れの木のように立っていたきみが
いきなりケージを突き出したのだった
台所のテーブルの上の
砂の詰まったケージをながめているうちに
わたしは忽然と悟った
きみが遠くに旅立ったことを。
砂の上のちいさな足跡と
食べ散らかした向日葵の種たち
昼間砂のなかにもぐっていて
夜間歩きまわる砂色の生きものよ
時代遅れの技法だなんていうひともいるけれど
わたしが好きなロバート・ブライが好きな
擬人法が好きさ
深夜台所から寝室までフローリングの床を這って
やってくる声たち
…死にたかったわけではない
…だけど死なないわけにはいかなかったのだ
ふしぎで、ちょっと不可解なところがある…のに、というかそれだからこそ、一読気持ちをつかまれてしまった。こういう詩はなかなか書けない。ある人が中上さんはノンフィクションをフィクション化してしまう詩人だ…といったが、現実をこのように異化できるのは、技術というよりも、固有の感性としか思えない。したがって、こればかりは習うことのできない領域かもしれない。
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