ステンドグラス作家菊池健一さんが他界されたお知らせを受け、ショックを受けた。
私はかつて銀座のデパートの画廊で彼とコラボレーションをしたこともあり、またこのマンションの一室の窓には、彼の作品(リュートを奏でる二人の楽人のステンドグラス)がはまっている。
いろいろな思い出があるけれども、私にとって特に忘れられないのは、友人の0さんと彼の千葉のアトリエを訪れたとき、彼に案内されて見た蛍のすばらしい乱舞の光景だ。暗い夜道を車でしばらく走ってから、暗い谷のような原っぱのようなところへたどりつき、そこで車のテールランプを点滅させる。と、たちまち蛍が群れをなして、私たちのまわりに集まってきて、私たちはみな蛍に全身まぶされた!といっても過言ではないくらい。あたり一面の蛍の乱舞には声もなく、ただ茫然と立っていただけのあの時のシーンは、まぶたの裏にやきついて消えない。おそらく一生消えることがないだろう。
アトリエを訪ねたときおみやげにもらった青いガラスも、蛍の記憶と連動する。
お会いしたことはなかったが、夫人にお電話して伺うと、栃木にアトリエを移してからは、大谷石を使った作品に力を入れておられた由。ネットをあけてみると、そこに美しい大谷石のランプをいくつも発見した。
ステンドグラス、石のランプ…そして蛍。
彼も生涯光を追い求めて生きた人なのだろうか。それにしてもあまりに早すぎる彼の死にことばがない。
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