風景 前田ちよ子
僕等はこれから生まれるのか
それとも死んだあとなのか
僕等のいるこの闇が
何なのかわからない
さくらのはなの散る下で
僕等は輪になって座り
うすいももいろをしているはなびらを
たぐり寄せては
細い針と細い糸で綴り
僕等の知らない
あるいは忘れてしまった母のための
厚い花輪を作り続ける
切れ切れに はるか遠く
僕等を呼ぶ声が聞こえたような気がして
手を止め 眼をこらし
耳を傾けたあと
一層緻密になる闇
ひざの上に積み上がって来る
はなびらの重い綴りを繰り
積み上がれば繰り
積み上がれば繰り…
僕等はこの繰り返す作業に埋没し
やがて さくらのはなびらの散る音も
あの声も…
僕等には聞こえなくなる
これは「ペッパーランド」の創刊同人だった前田ちよ子さんの作品。今は詩をかくことから離れているけれど、彼女の詩には、時空を超えた生への神話的想像力が感じられて、読むたびに心惹かれるものがあった。その詩に触れるたびに、しんとした気持ちにさせられた。
「前田さん、また作品を読ませて欲しいよ!」
この声がいつか彼女の耳に届くように!
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