ニューオーリンズ

ニュースでニューオーリンズのハリケーンによるひどい災害の様子を見ると
いたたまれない気持ちになる。どんな災害でもそうだが、ニューオーリンズ
は14年も前のことだが、フレンチクオーターにあるホテルに何日か泊まり、
愉しい思い出をもらった街なのだ。バーボンストリートのホールでミントジュ
レップを飲みながら楽しんだジャズの数々。プリザベーションホールの前に
1時間以上も行列して、床に座り込んで聞いた地響きするようなかっこいい
バンドの響き!
あのピンクの化粧台のあった、マリー・アントワネットホテルはいまどうなってい
るだろう。それから夜のミシシッピを下るケイジャンクルーズの夕食で、同席した
スイス人夫妻と、サンフランシスコからやってきたと巨大なお腹をゆするアメリカ
人の夫とその妻。お祭り騒ぎだったあれらの日々の断片が、影絵のように、いま
脳裏をめぐる。
アメリカにいたとき、ニューオーリンズの話になると、だれもが嬉しそうな顔にな
り、目を輝かせたものだ。いろいろな陰影はあっても、旅人にとってあんなユニ
ークな出会いの街はめったにこの地上にはない気がする。だからいっそうつ
らいし、あそこに暮らすひとびとのために祈りたい。少しでも早く救いの手が伸べ
られるようにと。陽気だったあの人たちに穏やかな日々が戻ってくるようにと。
私たちにかけがえのない悦びと思い出をくれたあの街のために、今、切に祈りたい。

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