隔月に開いているファンタジーの読書会で、昨日は漱石の「夢十夜」を読む。
ファンタジーといっても間口が広いので、これもその範疇に入れてしまって、
夢のイメージの多様な読み取り方を楽しむ。ユングでいうと、彼のアニマともいえるものを
あまりにもくっきり浮かび上がらせる第一夜の女の「黒い眸」「真珠貝」「星の破片」「真珠貝
の裏に映る月の光」「墓標のそばで百年待つ男」など、古典的なイメージの連結による
かっちりした詩的構成に、漱石の無意識の深みをのぞく意識の強靭な光と表現力をあらた
めて感じる。表現者というものはすごいものだと思う。夢は外部に表現されることで、初めて
万人の夢として立ち上がるものなのかもしれない。ひとびとの共有財産として。
もう一つ心に残るのは、青坊主を背中に負って歩む第三夜の夢だ。あれは「文化五年辰年だろう」
「御前がおれを殺したのは今から丁度百年前だね」、と背中の子どもがいうくだりにくると、
何度読んでも背中がぞくぞくする。漱石は人類のシャドウを自己の内部に負っていたという
解説はユング心理学派の秋山さと子さんの説だ。
メンバーのそれぞれが持ってきた夢についての報告もあって、それは次回に持ち越し。
どう展開するか次が楽しみだ。つづきはまず第六夜からになる。
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