三宝寺池
閑
(
しづ
)
けさよ、三宝寺池、
桜咲き、
桜の枝に
人居りて釣竿垂れぬ。
閑
(
しづ
)
けさよ、三宝寺池、
石神井
(
しやくじゐ
)
や、
鉾杉
(
ほこすぎ
)
むら、
影は沈む、緑青の水の
面
(
おもて
)
。
閑
(
しづ
)
けさよ、三宝寺池、
昼
闌
(
た
)
けし日ざしに
枯れ枯れの葦、
片明る菱、
浮萍
(
うきぐさ
)
。
閑
(
しづ
)
けさよ、三宝寺池、
潜
(
かづ
)
き
鳥
(
どり
)
、かいつぶりの
よく響きて、
ともすれば連れ走る、頭のみぞ。
閑
(
しづ
)
けさよ、三宝寺池、
雲は行き、
春は雲間に
なにとなくまだなごみぬ。